医療安全の安全文化とは?新人・ベテランに浸透させる5つの方法を専門家が解説

医療福祉

新人にもベテランにも届く『安全文化』とは?医療安全管理者が現場で最初に着手すべき5つの行動

夜勤帯の救急外来。
新人スタッフが、薬剤準備の場面で手を止めたまま固まっていました。
「先輩…これ、本当にこの量で合ってますか?」

その声は震えていて、周囲のベテランはバタバタと忙しそうに動いている。
“こんな時に聞いていいのかな…”――新人の迷いが、肌に触れるように伝わってきました。

一方、ベテランはこうつぶやきます。 「新人は慎重すぎ。私たちの頃はこんなの自分で調べてたよ」

同じ“安全”という言葉を使っていても、認識はまるで違う。 このすれ違いこそ、安全文化が届いていない証拠だと、私は看護師時代に痛感しました。

では、医療安全管理者は最初の一歩として、現場で何に着手すべきなのか。 今日からできる5つの実践をお伝えします。


1. 医療現場で『安全文化』が機能しない本当の理由

厚生労働省は、安全文化を「個人の注意力ではなく、組織として安全を支える姿勢」と明記しています。

しかし現場では、

  • 新人:何が危険か言語化できない
  • ベテラン:経験則で判断してしまう
  • 管理者:同じ基準で見ていると思っている

という“安全の基準のズレ”が日常的に起きています。

さらに、医療事故調査センターの報告書では、原因として 「報告の遅れ」「コミュニケーション不足」が毎年高い割合を占めています。

つまり、「情報が上がらない構造」こそ安全文化の欠如なのです。

だからこそ、管理者の最初の行動が重要になります。


2. 医療安全管理者が最初に着手すべき5つの行動

行動①:共通言語をつくる — 認識差を埋める

“ヒヤリハット”“リスク”“インシデント”―― この基本語が新人とベテランで違う意味になっている職場はとても多いです。

定義を揃えるだけで、スタッフの会話が変わります。 新人は「何が危険かわからない」という不安が薄れ、 ベテランは「伝わりにくい」というストレスが減ります。

文化は、一人の行動から静かに始まる。


行動②:“責めない文化”を見える化する — 心理的安全性の土台

「報告したら怒られるかも」という恐怖があると、情報は確実に止まります。 これは個人の問題ではなく組織風土の問題です。

大切なのは、管理者が「報告=価値ある行動」と明確に伝えること。
診療科会議やカンファレンスで “出してくれてありがとう” を毎回必ず言う。

その一言で、報告数は驚くほど変わります。 新人は「声を上げてもいいんだ」と初めて気づき、文化が動き出します。


行動③:ヒヤリハットを“出したくなる仕組み”に変える

厚労省の医療安全指針では、リスク情報の収集・共有が必須とされています。

しかし「書くのが面倒」「時間がない」が現場の本音。 そこで大事なのは、“出したくなる仕組み”を作ることです。

  • 1分で書ける報告用紙
  • スマホ入力OKの簡易フォーム
  • 提出者を毎回必ず称賛する文化

報告が苦痛でなくなると、スタッフは自然に動き始めます。


行動④:小さな成功体験を意図的に作る — 組織が変わる瞬間

私は施設長時代、改善の出発点は「小さな成功」だと学びました。

“改善案を1つ採用した” “新人の気づきを採用した” “患者からのありがとうを共有した”

たったこれだけで、スタッフのモチベーションが大きく変わります。

チームが同じ方向を向く瞬間は、必ずつくれる。


行動⑤:現場の声を可視化し、改善サイクルを回し始める

ベテランが納得しやすいのは「見える化された情報」です。 ヒヤリハットの傾向や事例の種類を小さな掲示物にまとめるだけで、 “安全はみんなで守るもの”という意識が生まれます。

完璧なPDCAでなくても大丈夫。 まずは“ゆるPDCA”で十分です。

行動が変われば、文化は必ず動く。

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※クリックすると別タブで表示されます。


3. 新人・ベテランに届く安全文化のつくり方

安全文化は、特別なスキルではなく毎日の会話から育ちます。

  • 「誰のための安全か」を毎回言葉にする
  • 新人の気づきを価値あるものとして扱う
  • ベテランの経験則を“言語化して共有財産”にする
  • 多職種で共通の目線をつくる

安全文化は、今日の一言、今日の一歩から。


4. 安全文化を広げるために—医療安全管理者研修が果たす役割

医療安全管理者には、

  • 安全文化をつくるファシリテーション
  • 現場の声を引き出す心理的スキル
  • 改善をまわす実務力
  • 最新の医療安全指針の理解

が求められます。

これらは“独学”では身につきにくい領域です。 研修だからこそ、他施設の視点や最新動向を学び、多職種での視野が広がります。

もしあなたが、 「現場の空気を変える力を身につけたい」 と思ったなら、ぜひ一度チェックしてみてください。

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【まとめ】

  • 安全文化は“行動ベース”で育つ
  • 新人・ベテランの認識差を埋めるのが管理者の最初の仕事
  • 責めない文化・報告したくなる仕組み・小さな成功が現場を変える
  • 一度の学びが、一人の意識を変え、百人の生活を守る

【引用・参考文献】

・厚生労働省 医療安全対策:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196987.html
・医療安全支援センター:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000030975.html
・医療事故調査・支援センター(日本医療安全調査機構):https://www.medsafe.or.jp/

※本記事は、看護師・公認心理士・医療安全研修トレーナーとして得た知見と、一次情報(厚労省・医療安全関連機関)を基に執筆しています。

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